Baba Lab.
Department of Biomolecular Engineering, Graduate School of Engineering,
Nagoya University 名古屋大学大学院工学研究科 生命分子工学専攻 馬場研究室

Research

研究内容  Research Themes

ゲノム解析に代表されるように21世紀の生命科学や生物医学においては、膨大なバイオ情報を誰よりも先駆けて獲得することが極めて重要な課題となってきている。しかも、これらの情報は、すぐに病気の診断や予防に活用することが可能であり、少子高齢化社会における「健康寿命」の延伸と疾病の克服ならびに「国民の健康を守る」ための技術開発のために必要不可欠である。さらに、システムバイオロジーに代表されるような生命科学の新たな潮流を生み出すことができる。

上記目的を達成するために、新たなナノ構造構築に基づくナノ空間創成とナノ空間における生体分子・細胞の特異的現象を解明し、ナノ空間科学を創成するとともに、ナノ空間工学を活用した新しいバイオデバイスを開発している。さらに、ナノ空間科学・工学融合によりのみ実現できる生命の新規計測技術の創製を行うとともに、その計測技術でしか解明できない生命現象を解明する。これらの研究を通して、バイオテクノロジーとナノテクノロジーの融合領域における新しい学問領域を創成するとともに、新規産業創出に寄与することを目的としている。主な研究テーマの内容は以下のとおりである。

1)次世代ナノバイオデバイスの創成とゲノム医療への応用に関する研究

マイクロ・ナノテクノロジーを活用したゲノム解析に関する研究、具体的には、高速ゲノム解析技術であるナノボール技術、ナノピラーデバイス、PCR等反応デバイスの研究を進めてきた。また、これらの基礎研究に基づいて企業と共同で、血液からのゲノムDNA抽出・PCR・制限酵素断片生成・DNA分離・検出を一体化したデバイス開発と、ゲノム多型解析、臨床診断、在宅診断技術への応用・実用化を進めてきた。

2)システムバイオロジーを目指した計測技術開発に関する研究

量子ドットを用いた細胞イメージングとがんのフォトダイナミック療法への展開、1分子DNAイメージングの研究開発を進めてきた。さらに、分子イメージング技術により、細胞内の全ての反応をシミュレーションできるシステムバイオロジーを確立するための研究を進めている。

3)1分子DNA解析と1分子DNAマニピュレーションに関する研究

MEMSおよびナノテクノロジーを駆使して、生体分子の1分子計測技術と1分子マニピュレーションの技術を開発してきた。これらの技術を活用して、1分子DNAを自由に伸張、切断などを可能にし、1分子レベルでのDNA診断やDNAシークエンスなどを実現するための要素技術の開発を行った。

4) ナノ空間における生体分子・細胞の構造・機能解析に関する研究

1分子イメージング技術を駆使して、1分子DNAが、ナノ構造中で特異なコンフォメーションをとることを明らかにしてきた。また、ナノ構造の違いにより、DNA分子の構造や物性が、異なることを明らかにしてきた。

今後の展望

これまでの研究をさらに進展させるとともに、ナノとバイオの融合領域において新たなコンセプトの提案を行っていく。そのために、ナノ微細加工技術や分子ナノテクノロジーなどを駆使して、新規ナノ構造体に基づくナノバイオデバイスを創製し、ナノ空間における生体分子や細胞の特異的な現象を解明するためのナノ空間科学を創成するための研究を展開する。また、ナノ空間科学とナノ空間工学を融合することで、ゲノム解析により明らかになってきた疾患関連遺伝子や疾患関連タンパク質を計測することによる簡便・迅速な疾患の診断・予防技術を開発し、オーダーメード医療を確立する研究を進めるとともに、分子イメージング技術や1分子技術により1分子DNAシークエンス技術や疾患の新規治療技術を開発する。さらに、細胞内の全ての反応を解析・シミュレーションできるシステムバイオロジーを確立するための研究開発を進める。

Nagoya University Research, which launched on Feb. 25, 2010 presents highlights covering the research achievements of our flagship research project, including our FIRST program.